民法:親族法⑭嫡出の否認

こんにちは。行政書士の小幡です。今日は「嫡出否認」(民法774条)に触れましょう。ここも大きな改正でした。普段意識しない条文ですが、大事な条文です。ふりかえってみましょう。

では、条文から。

(嫡出の否認)
第七百七十四条 第七百七十二条の規定により子の父が定められる場合において、父又は子は、子が嫡出であることを否認することができる。
2 前項の規定による子の否認権は、親権を行う母、親権を行う養親又は未成年後見人が、子のために行使することができる。
3 第一項に規定する場合において、母は、子が嫡出であることを否認することができる。ただし、その否認権の行使が子の利益を害することが明らかなときは、この限りでない。
4 第七百七十二条第三項の規定により子の父が定められる場合において、子の懐胎の時から出生の時までの間に母と婚姻していた者であって、子の父以外のもの(以下「前夫」という。)は、子が嫡出であることを否認することができる。ただし、その否認権の行使が子の利益を害することが明らかなときは、この限りでない。
5 前項の規定による否認権を行使し、第七百七十二条第四項の規定により読み替えられた同条第三項の規定により新たに子の父と定められた者は、第一項の規定にかかわらず、子が自らの嫡出であることを否認することができない。
(嫡出否認の訴え)
第七百七十五条 次の各号に掲げる否認権は、それぞれ当該各号に定める者に対する嫡出否認の訴えによって行う。
一 父の否認権 子又は親権を行う母
二 子の否認権 父
三 母の否認権 父
四 前夫の否認権 父及び子又は親権を行う母
2 前項第一号又は第四号に掲げる否認権を親権を行う母に対し行使しようとする場合において、親権を行う母がないときは、家庭裁判所は、特別代理人を選任しなければならない。

さて、民法第774条と775条を挙げてみましたが、簡単に言うと、条文で定められた父が実際と違う時などの場合に「物言い」をつけることを嫡出否認といいます。

たとえば、「離婚したけれど、元夫の子として戸籍に入れたくない」「血縁上の父と法律上の父が違う」……。こうした家族の切実な問題に関わるのが、民法774条です。2024年の改正点です。

民法774条は、「民法772条によって推定された父子関係を、裁判手続きによって否定する権利」について定めた規定です。これまでは、父子関係を否定する訴え(嫡出否認)を起こせるのは「夫(父親)」のみに限定されていました。しかし、改正によりその権利が拡大されました。

改正前は夫のみが訴えることができた「嫡出否認の訴え」ですが、改正により夫に加え、およびも「嫡出否認の訴え」を提起できるようになりました。これにより、夫が協力してくれないケースでも、母や子自身の手で正しい血縁関係を戸籍に反映させる道が開かれました。

そして、話は変わりますが、民法774条に関連して、過去に大きな議論を呼んだ判例があります。色々と考えさせられます。

最高裁決定(平成26年7月17日)

  • 事案: 妻が婚姻中に別の男性との間の子を懐胎・出産。DNA鑑定で夫との血縁がないことが「100%」証明されていたが、夫が嫡出否認を行わなかったケース。
  • 最高裁の判断: 最高裁は、「たとえDNA鑑定で血縁が否定されても、嫡出推定(772条)が及ぶ限り、嫡出否認の訴え等の法的妥当性を欠く手続き以外で父子関係を否定することはできない」としました。

この判例では、当時の法律では、どれだけ医学的な証拠があっても「夫」が動かなければ父子関係を覆せませんでした。この判例による厳しい現実が、今回の「母や子にも否認権を与える」という法改正を後押しする一つの要因となりました。

もし、自身の家庭や身近なところで「戸籍上の父と実の父が異なる」問題が発生した場合、以下の3点に注意しましょう。下記内容は774条と775条で規定されています。

  1. 出訴期間の延長(3年):
    以前は「子供が生まれたことを知ってから1年以内」に訴えなければなりませんでしたが、改正後は「3年以内」に延長されました(夫・母の場合。子の場合は成年に達してから3年以内)。
  2. 子による否認権:
    子ども自身が、成人後(あるいは法定代理人を通じて)自らのルーツを正すために訴えることが可能になりました。
  3. 無戸籍問題の解消へ:
    「元夫の子にしたくないから出生届を出さない」という選択をする前に、改正された774条に基づき、母から否認権を行使する検討ができるようになっています。

まとめ

民法774条の改正は、「血縁の真実」と「子の福祉」をより重視する方向へ舵を切ったものです。かつての最高裁判例のような「医学的証拠があっても法律が壁になる」という事態は、この改正によって大きく改善されることが期待されています。どんなに正しいことであっても法に背くことは裁判所にはできないのです。

ここまでお読みいただきありがとうございました!

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